新水道ビジョンや危機管理マニュアル等と本提案の「設備更新計画」の位置付け
水道施設(電気計装・機械設備)の設備更新
1.水道設備を取り巻く背景
水道の普及率は100%に近づき、近年では普及(建設)から維持(管理)・向上(更新)の時代に入っています。厚生労働省(2008年7月改訂)は「水道ビジョン(~世界のトップランナーを目指してチャレンジし続ける水道~)」を公表し、それに伴う水道事業ガイドライン(2005年1月17日:(社)日本水道協会)が制定されました。 さらに、人口減少や東日本大震災の経験など、水道を取り巻く状況の大きな変化を踏まえ、2013年3月に新水道ビジョンが公表されました。
一方、市町村合併による広域化や水質基準の改正(おいしい水に関連する水質項目の見直し)、環境問題(ISO14000の普及や地球温暖化対策・クリーンエネルギーの利用・水環境循環系の確保・廃棄物処理法に伴うリサイクル対策)、情報公開、危機管理対策、効率的な経営手法等、様々な課題が水道事業を取り巻いています。
2.水道設備更新計画の必要性
マスタープランの策定においては、新水道ビジョンや危機管理マニュアル等、厚生労働省からの通達に基づく業務が多数あります。しかしながら、水道設備(電気計装・機械設備)においては、これらの業務の具体的な内容までは明記されず、それぞれの業務の関連性についての定義も曖昧なのが現状です。 また、環境問題における省エネルギーや未利用エネルギーの有効活用、コスト縮減にからむ人的資源の問題、イニシャル・ランニングコスト縮減による長期整備計画、自動化・省力化の問題などを水道設備(電気計装・機械設備)の問題として包括的に捉えることは非常に困難な状況にあります。
2-1.設備更新を必要とする要因
電気計装・機械設備機器は、合理的な維持管理を行うために構成・制御方式の統一化を目指した更新が必要となります。 また、更新を行うに際しては要求事項が多々あり、単に機器の寿命だけで更新の是非を決定できません。これらを受けて、更新に至る種々の要因を解析する必要が生じます。以下の要因を1つの図に表現することにより、更新時期を明確にすることが可能となります。
物理的要因…故障率と経過時間の相関
(2)故障発生率
機能的要因…絶対的機能低下と相対的機能低下の比較
(1) 機能・性能
経済的要因…経済的耐用年数と金額の相関
(3) ライフサイクルコスト
2-2.設備更新時期の明確化
導入初期
設備を設置してから数年間は初期故障による不具合はありますが、大した点検を必要とせず、機能低下も見られず、機器の減価償却によりコストが低下する期間です。
維持管理・補修時期
この時期における初期段階は導入初期と変わらぬ状態ではありますが、後半は日常点検以外にも機器の動作試験や測定試験を行う必要があり、新機種の登場などにより機能も相対的に低下しはじめます。さらには故障の原因につながる因子も発生し、部品交換の必要性もでてきます。ライフサイクルコストは減価償却による低下傾向から、後半では維持管理費の増大による上昇傾向に変わります。
更新時期
この時期では、維持管理費は増大の一方で、メーカーからの部品供給も一部不可能となり、機能性の低下は加速度的になります。当然ながら維持管理にも支障が出てくることから、故障発生率もさらに上昇することになります。実際の更新については、図に示す3つの要因の交錯する時期に行うことが最善です。この時期(数年の幅がある)の中で更新計画を詳細に立案して実施に向かうこととなります。一般に基準更新年数の設定については、設備更新を機能的+安定的(安全)+経済的に行うことが出来るように、図の交錯場所を現設備の状態から定量的に把握して決定する必要があります。
3.設備更新計画業務のスキーム
4.業務実績
既存の認可、計画やマスタープラン・新水道ビジョンなどでは、電気計装・機械設備更新計画の業務内容は、具体性の無い計画とならざるを得ないのが現状です。実際に基本設計時に条件として提示されているのは金額(予算)と抽象的なキーワードのみです。それに対して「設備更新計画」では、年次計画において具体的な条件を設定します。一方、具体性の中にも選択肢を複数設定することで、基本・実施設計時の時間差による社会情勢に配慮し、見直しを行えるのが大きな特徴です。
近5ヶ年の実績(平成30年10月1日現在)
受注年度 | 発注者 | 業務名称 |
---|---|---|
平成28年(2016年) | 岡山県岡山市 | 浄水場排水処理施設電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成28年(2016年) | 群馬東部水道企業団 | 浄水場浄水処理施設電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成28年(2016年) | 静岡県企業局西部事務所 | 浄水場浄水処理施設電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成28年(2016年) | 埼玉県企業局 | 取水ポンプ場電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成28年(2016年) | 石狩東部広域水道企業団 | 導水ポンプ場電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成29年(2017年) | 大阪府伊丹市 | 浄水場浄水処理施設電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成29年(2017年) | 千葉県水道局 | 浄水場高度処理施設電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成29年(2017年) | 阪神水道企業団 | 浄水場高度処理施設電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成29年(2017年) | 沖縄県企業局 | 浄水場浄水処理施設電気計装設備・機械設備の更新設計 |
平成29年(2017年) | 高知県高知市 | 浄水場排水処理施設電気計装設備・機械設備の更新設計 |
他多数