下水汚泥焼却炉の閉塞危険性評価及び焼却炉閉塞防止方法

近年、下水汚泥焼却炉(流動炉)において、汚泥の燃焼過程で焼却灰が煙道に融着し、煙道が閉塞する事象が複数報告されています。本技術は、このような事象に関する原因および有効な対策、更には対策技術における制御・管理方法を示すものです。

焼却炉の閉塞原因(メカニズム)

焼却炉投入汚泥のりんと金属類の存在量のバランスによっては、焼却温度よりも低融点の物質が生成されるため、焼却灰が煙道に融着し閉塞の原因となります。この背景には、以下に示す下水道の各種施策が関連しています。

  1. 高度処理の普及に伴う汚泥のりん含有率の増加
  2. 合流式に比較して流入水起因の金属量が少ないとされる分流式下水道の普及促進
  3. 地球温暖化対策として焼却過程で生成する温暖化ガス成分である亜酸化窒素を削減する為導入された高温焼却の推進による焼却温度の上昇

焼却炉の閉塞危険性の判定

焼却灰(あるいは閉塞物)の分析結果からAl、Fe、Ca、Mg、Pのmol数を求めて、Pに対して金属が過剰に存在すれば “ 閉塞の可能性は低い ” 、少なければ “ 閉塞の危険性あり ” と判定できます。以下に示す閉塞抑制指標値が1.0を上回るか否かによって閉塞危険性を判定することができます。

閉塞抑制評価指標値が1.0を上回るか否かによって閉塞危険性を判定可能

X : 閉塞抑制指標値[-]
Fe2O3 : 焼却灰の酸化鉄(Ⅲ)分析値[%]
Al2O3 : 焼却灰の酸化アルミニウム分析値[%]
CaO : 焼却灰の酸化カルシウム分析値[%]
MgO : 焼却灰の酸化マグネシウム分析値[%]
P2O5 : 焼却灰の五酸化二りん分析値[%]
M(i) : 化合物iの分子量[g/mol]

閉塞抑制対策

焼却前の汚泥に対してポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)などの金属含有薬剤を添加することで、付着の原因である低融点化合物を生成するりん酸を鉄と反応させ、高融点で付着性の低いりん酸鉄化合物にすることができます(下図)。

ポリ鉄添加による閉塞予防の原理(模式図)

ポリ鉄添加による閉塞予防の原理(模式図)

※閉塞抑制指標値の考え方および計算式からは、鉄以外にアルミニウム、カルシウム、マグネシウムといった金属を添加することでも閉塞予防効果が得られると考えられます。添加薬剤は経済性や維持管理性を考慮して決定する必要がありますが、ここでは例としてポリ鉄を用いた方法について示しました。

焼却灰の色による判定・対策

焼却灰の色と閉塞抑制指標値の間に相関があることが分かっています。例えば下図のように12月には茶色であった焼却灰が冬期(1~3月)には白色となり、指標値が低いほど(金属に対するりんの比率が高いほど)白色を帯びることが分かっています。

このことを踏まえて、色を数値化するセンサーを用いて焼却灰の色を数値化し、指標値を推定したうえで、推定された指標値が1.0未満の場合には、ポリ鉄添加量を計算する演算システムと薬剤添加装置を含む制御系を構築することによって、薬剤コストを縮減するとともに、ポリ鉄添加によってもたらされると想定される硫酸腐食も軽減することができます。

例)清瀬 H25.12~H26.3(左から指標値が高い順に)
12月 3月 1月 2月
焼却灰の色 tokkyo-shoukyakuro03 tokkyo-shoukyakuro04 tokkyo-shoukyakuro05 tokkyo-shoukyakuro06
Fe2O3 12.7 [%] 12.1 [%] 11.9 [%] 11.4 [%]
指標値 1.24 [-] 1.12 [-] 0.97 [-] 0.94 [-]
本技術においては以下の特許を利用しています

【本技術の連絡先】事業統括本部環境・資源部技術第三課 課長 塚原純哉 TEL:03-5323-6273
(1)
◇ 特許名称 : 「焼却炉閉塞危険性評価方法及び焼却炉閉塞防止方法」
◇ 登録番号 : 特許第5881260号
◇ 発明者 : 塚原純哉、村田道拓、中村洋斗、斉藤秀仁、高井貢、竹島正(他3名:東京都、東京都下水道サービス㈱との共同出願)
◇ 出願日 : 平成26年5月12日
◇ 特許登録日 : 平成28年2月12日
(2)
◇ 特許名称 : 「焼却炉閉塞防止方法」
◇ 登録番号 : 特許第5974335号
◇ 発明者 : 塚原純哉、村田道拓、中村洋斗、斉藤秀仁、高井貢、竹島正(他3名:東京都、東京都下水道サービス㈱との共同出願)
◇ 出願日 : 平成26年5月12日
◇ 特許登録日 : 平成28年7月29日