包括的民間委託

1.効率的な民間活用の必要性

我が国の地方公共団体では、地方財政の緊縮化が進む中で効率的な公共サービスを提供することがますます重要になってきています。 また、行政サービスの現場では2007年から始まった「団塊の世代」の大量退職によるノウハウのある人材の流出という人的制約にも直面しています。 そのため、公共サービスを行政のみで提供していくことの限界も指摘されているところです。このような中、公共サービスを行政が独占的に担うのではなく、民間企業などへ積極的な委託等や、PFIなどの民間活用手法の選択が必要となっています。現状においても廃棄物処理施設の部分的な委託は行われていますが、より効率的な民間の活用手法として、PFI手法や指定管理者制度、包括的民間委託が挙げられます。

1-1.活用手法の導入状況と課題

活用手法のうち、包括的民間委託は、施設の運転管理や保守点検、修繕・改良などを包括的に行うことで、より効率的に施設の管理を行っていく方法として、近年多数の公共施設で採用されています。

PFI 指定管理者制度 包括的民間委託
導入の状況
  • 平成11年にPFI法が制定されて以降、実施方針公表件数及び事業費は着実に増加している。
  • 都道府県の6割強、政令指定都市の9割以上が実施方針公表済みとなっている。一方で、その他の市町村では6%にとどまっている。
  • 平成15年の地方自治法一部改正により実現し、約7万施設で導入されている(全国の公の施設の約15%)。
  • 公募により選定した施設は約3割、非公募による選定が6割超となっている。
  • 運転・維持管理の詳細については民間事業者の裁量に任せる性能発注により民間企業のノウハウを活用し、効率化、コスト削減、人件費の削減等を図る委託方式であり、下水道、廃棄物処理施設等において導入されている。
課題
  • 今後の課題としては、競争的対話やコンセッション方式の導入、地方公共団体への導入支援等がある。
  • 指定管理者制度の課題としては、公共団体側に残る管理者リスク、非公募による選定、指定管理料の引き下げ等にかかわる課題がある。
  • 民間事業者選定プロセス、選定・契約後の業務の監視、評価にあたって公共側に高い能力が求められること等が課題である。

1-2.委託範囲による効率化の相違

平成13年4月に「性能発注の考え方に基づく民間委託のためのガイドライン」が国土交通省より公表され、人件費や維持管理費の削減が見込めることから、すでに性能発注へ移行した自治体もあります。性能発注の運転・維持管理の委託範囲による効率化の相違を下図に示しています。運転・維持管理の範囲を以下の3つのレベルに分けています。

  • レベル1:運転管理のみ
  • レベル2:運転管理+ユーティリティ管理
  • レベル3:運転管理+ユーティリティ管理+補修

これらのうち、レベル1は運転管理における民間の創意工夫による効率化や現場の公共人件費の縮減が図れますが、レベル2はこれに加えて調達の柔軟化、品質の適正化などによるコスト縮減が図れるとされ、レベル3はさらに補修や保守点検の効率化による縮減が図れるとされています。包括的民間委託では民間事業者が施設を適切に運転し、一定の性能を発揮することができるのであれば、施設の運転方法の詳細については民間事業者の裁量に任せるという考え方に基づいています。 委託の範囲の決定については、現状の施設管理の状況や今後の職員数などを考慮して検討していく必要があります。

委託範囲による効率化の相違

委託範囲による効率化の相違

2.民間委託の検討の手順

包括的民間委託の導入手順としては、下図に示すように大きく、 (1)導入の準備段階 、(2)事業者の選定段階に分けることができます。

業務構成(検討手順等)

民間委託の検討の手順

(1)導入の準備段階の作業

導入の準備段階で以下のような作業が必要になります。

  1. 導入方針決定や費用効果確認のために必要な現況維持管理費用の把握
  2. 委託範囲、委託期間、募集方式等の決定
  3. 募集要項※に添付する施設機能報告書の作成

このうち、1、3については膨大なデータ整理が必要になると思われます。 従って、性能発注へ移行する場合には、導入の準備段階で多大な期間を要することになりますが、 日水コンではこれらの作業を自治体の施設管理担当者とのヒアリングにより専門のスタッフによって効率的な取りまとめを行います。 これらの整理作業は、募集要項案の作成時において短期間で性能発注に移行する決め手となります。

※募集要項案の作成

募集要項に必要な書類

募集要項は、事業者の選定段階で必要な書類であり、これらを次の段階で作成していく必要があります。

まず、説明書は受託者選定の手続きを示した資料であり、契約条件書はリスク負担や対応等の契約条件を示すものです。また、業務要求水準書は委託の候補となる事業者からの提案書の作成の前提となる業務水準を定めた資料であり、最も重要な資料です。 さらに、施設機能報告書は各設備の劣化状況や補修履歴等、施設機能の状況を表す資料であり、 これが導入の準備作業で行った膨大なデータの整理結果となります。性能発注への移行は、維持管理費の削減が見込めることから、ますます加速されていくものと思われます。しかし、整備すべきデータが膨大で、性能発注への移行方針が示されても、前述したように準備作業に多大な日数を要し、早急な維持管理費の削減につながらないことが予想されますので、効率的な作業が求められます。

3.業務実績

近5ヶ年の実績(平成30年10月1日現在)

受注年度 発注者 業務名称
平成26~31年(2014~2019年) 大月都留広域事務組合 一般廃棄物処理施設長期包括運営業務委託に係る運営監理(モニタリング)業務
平成30年(2018年) 秋田県北秋田市 クリーンリサイクルセンターエネルギー回収推進施設長期包括的運転管理事業に係るモニタリング支援業務委託