AI技術を活用した施設運転管理等の支援

1.AI技術の普及

昨今、様々な場所で「AI(人工知能)」が適用されています。AIは「コンピュータを用いて人間のような知能を実現することを目指した技術の総称」とされており、特に深層学習(ディープラーニング)はコンピュータの計算能力向上等により近年急速に普及しました。水業界でもAI技術の導入事例が複数報告されていますが、AIは決して万能な技術ではないため、その特性を踏まえて適用可否を検討する必要があります。

AI・機械学習・深層学習の関係

令和元年度情報通信白書

図1 AI・機械学習・深層学習の関係

表1 AIが得意なこと、苦手なことの例
得意なこと 苦手なこと
豊富な観測データが存在する状況での予測・判別 観測データが少ない状況での予測・判別
画像・音声・文字データ等の取扱 過去に経験がないような事象(災害等)
「正解」が与えられる状況での適用 「なぜそうなったか」の説明

2.水業界におけるAI技術適用事例

水業界(水道分野、下水道分野、河川・水環境分野)におけるAI技術の適用事例を表2に示します。「漏水リスクマップの作成」や「下水道管渠の劣化判定」等、設備のメンテナンスに活用するための技術や、「凝集剤注入率制御」や「反応槽の送風量制御」、「ダムの運転制御判断」のように、これまで人が判断してきた運転管理のノウハウにAIを適用する事例もみられます。「かび臭の将来予測」や「河川水位予測」のように、将来予測への適用もAIの得意分野となります。

表2 水業界におけるAI技術の適用事例(一例)
水道分野 下水道分野 河川・水環境分野
・漏水リスクマップ作成
・凝集剤注入率制御
・残留塩素濃度管理
・かび臭の将来予測
・下水道管渠の劣化判定
・雨天時侵入水量予測
・反応槽の送風量制御
・顕微鏡画像から活性汚泥診断
・橋梁等のひび割れ診断
・河川水位予測
・ダムの運転制御判断
・アオコ発生有無の判別

3.AI技術適用の基本的な流れ

AI技術を適用したい場合の基本的な流れは図2のとおりです。最初にAI技術を適用する目的を明確化し、本当にAI適用が最善手なのかを検討する必要があります。場合によっては、通常の統計モデル、数理モデル(数値シミュレーション等)、予測モデルを用いずに直接センサーによる測定等の方が適している場合も想定されます(表3)。さらに、AIにも、画像データを得意とするCNN(畳み込みニューラルネットワーク)や時系列データを得意とするRNN(再帰型ニューラルネットワーク)等、様々なモデルがありますので、どの手法が適用できそうか、初期段階で検討する必要があります。適用手法について方針が定まったら、データ整理した上でモデルを構築し、検証します。良好なモデルが完成すればシステム実装(現場への適用)を検討します。

当社は、「AIで何かできないか」という場合は、まずお持ちのデータや課題の整理からの検討を、具体的な課題をお持ちの場合は、AI技術以外の活用も見据えた最適な適用手法の検討から提案いたします。

図2 AI技術適用の基本的な流れ

表3 AI技術とその他の技術の適用条件の比較
適用条件 AIモデルの適用 統計モデルの適用 数理モデルの適用 センサーによる測定
将来予測が必要 ×
予測したい項目を説明する物理モデルが無い ×
「なぜそのように予測されたか」の説明が必要 ×
入手できる観測データが少ない ×
過去に経験のない事象も再現したい × ×

4.業務実績

2022年現在

受注年度 発注者 業務名称
令和2年度(2020年度) 東京都下水道サービス株式会社 焼却炉の閉塞抑制制御技術の開発に関する焼却灰調査委託その5
令和元年度(2019年度) 東京都下水道局 樋門開閉操作等へのAI活用に関する基礎検討調査委託