河川流域における水環境リスク評価

1.現状・課題

水環境リスク評価の必要性

水生生物保全の観点から化学物質等による水環境への影響が懸念されており、河川流域の水環境リスク解析・評価が必要とされています。

観測に係る範囲や頻度の課題

予測環境濃度(PEC)に観測値を用いる場合、河川流域の化学物質等の観測頻度は高々数地点、年に数回程度であり、観測値が無い地点や時期の潜在的なリスクを見逃すことが懸念されます。観測頻度を密にすることは経済的、作業的に困難です。

図1 水環境リスク評価の必要性

暴露評価モデルの必要性と課題

このため、河川水濃度を推定する数理モデルが必要とされます。現在、国内で公開されているモデルは空間解像度が粗く、定常性を仮定しており季節変動が考慮されていないため、水環境リスク評価のモデルとして十分ではありませんでした。

暴露評価モデルの適用

これらモデルの課題を解決したAIST-SHANEL Ver.3.0を用いて、界面活性剤の一つである直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)の暴露評価を実施した例を以下に示します。暴露評価モデルの適用により、国内の任意の河川流域を対象とした暴露実態の把握、将来予測が可能となりました。また、以下に示すインドネシアのジャワ島の適用結果から、このモデルは海外でも適用できることが確認できました。

図2 暴露評価モデルの適用例

2.活用が想定される様々な場面

暴露評価モデルは、今後、水源となっている河川流域における地震等の自然災害、工場等での化学物質等の漏洩事故(水質事故)といった事象への活用が想定されます。近年、企業の社会的責任活動(CSR)における事業継続計画策定(BCP)やレスポンシブル・ケア(RC)の取組として、関連する化学物質の水環境リスクの管理が求められており、今後は日本国内はもとより全ての国と地域の河川流域における暴露評価の重要性が高まるものと考えます。

図3 暴露モデルの適用シーン

図4 水質事故への適用イメージ

3.業務実績

2022年現在

受注年度 発注者 業務名称
令和2年度(2020年度) 国立研究開発法人産業技術総合研究所 災害・事故時に適用するための産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)のプログラムの改修作業一式
平成29年度(2017年度) 国立研究開発法人産業技術総合研究所 東南アジアの河川流域を対象としたAIST-SHANEL国際版の検証業務