ダムからのフラッシュ放流による河川環境改善

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良好な河川環境を形成・維持するためには、河道形態・河床の状態のいずれにも大きく影響する「流量」の管理が極めて重要です。このため、多くのダムでは固定化した河道・河床を更新するフラッシュ放流(弾力的管理)を実施しています。当社では豊富な経験を生かし、フラッシュ放流の試験計画やモニタリング調査、効果分析等を行い、本運用に至る道筋をご提示いたします。

図1 フラッシュ放流の様子
図1 フラッシュ放流の様子

■フラッシュ放流の目的

  • アユの生息環境改善(*最も多い事例です。)
    河床の付着藻類を剥離更新させ、アユが餌として好む「ビロウドランソウ」が生育しやすくします。
  • シルト等の堆積物の掃流により、底生動物や魚類の生息環境の改善やワンドの陸化の抑制、景観の改善などを行います。 

1.検討フロー

図2 調査・検討フロー
図2 調査・検討フロー

1-1. 計画立案

フラッシュ放流試験とモニタリングの計画を立案します。試験時の放流量は環境を改善したい区間の河道条件や放流設備の能力等を勘案し、改善効果が得られるように段階的に設定します。安全管理計画も重要です。

1-2. 効果のモニタリング

モニタリング調査は目的・期待する効果に応じた地点・項目・時期の設定が重要です。
 (例:アユの生息環境改善では、生育期間に、餌場となる瀬で、放流前後の流量と付着藻類の変化を把握します。)

<ポイント>

  1. 調査地点は、フラッシュ放流によって流速が大きく変わる平瀬を選択
  2. フラッシュ放流で河道内のゴミが下流河川に悪影響を及ぼさないように配慮

図3 フラッシュ放流による礫表面付着物の剥離掃流効果
図3 フラッシュ放流による礫表面付着物の剥離掃流効果

1-3. 効果分析

図4 付着藻類細胞数の経時変化
図4 付着藻類細胞数の経時変化

  • 調査結果について、フラッシュ放流に伴う水理量(放流量、流速等)と関係づけて分析します。
  • 付着藻類は、クロロフィルaや強熱減量等の一般的な項目に加え、綱別(珪藻・藍藻類等)細胞数や、アユに好まれるビロウドランソウ等に着目して分析します。
  • アユの生息や産卵場所として重要な瀬や、シルト等の堆積による陸地化が懸念される浅いワンドにおいて、流速観測が難しい場合は、水理解析(平面二次元不定流解析)を行い、掃流効果について分析します。

図5 アユのハミ跡の確認調査

図5 アユのハミ跡の確認調査

図6 平面2次元不定流計算によるワンド周辺の流速ベクトル・コンター

図6 平面2次元不定流計算によるワンド周辺の流速ベクトル・コンター

1-4. 課題の検討

  • フラッシュ放流の効果分析結果より、効果的なフラッシュ放流量及び放流期間について検討します。
  • フラッシュ放流の本運用に向けて、操作規則の改訂等の課題について検討します。
  • 必要に応じて、放流設備の改造等について検討を行います。

2. 業務実績

受注年度 発注者 業務名称
2014 佐賀県 単ダ調査 第1402300-014号 伊岐佐ダム
ダム調査委託(放流実験調査)
2014 秋田県山本地域振興局 粕毛川水質保全対策検討業務委託 26-K231-Y1
2013 中部地方整備局木曽川上流河川事務所 平成25年度木曽川上流流水環境改善検討業務
2009 内閣府沖縄総合事務局 平成21年度ダム管理合理化検討業務
2008 水資源機構木津川ダム総合管理所 木津川ダム群下流河川環境調査