水道の広域化

1.広域化による水道の基盤の強化

我が国の水道事業は、市町村経営を原則としてきた経緯もあり、1,344の水道事業のうち全体の約90%が市町村(指定都市含む)による経営です。高度経済成長期は、都市化の進展による水需要の増加への対応のため、水源確保の広域化を進めてきましたが、現在は、水需要の減少による料金収入の減少や職員の高齢化に伴う技術の確保と継承が大きな課題となっており、水道事業の経営基盤や技術基盤の強化を図るため、水道の広域化が期待されています。

表1 平成27年度の水道事業の事業数
都道府県営 企業団営 市町村営 合計
26(1.9%) 96(7.1%) 1,222(90.9%) 1,344(100%)

出典:地方公営企業年鑑

厚生労働省

厚生労働省による新水道ビジョンでは、連携形態にとらわれない多様な形態の広域連携を目指し、関係者による段階的な検討・連携による「発展的広域化」(事業統合・経営の一体化・管理の一体化・施設の共同化)を掲げています。

発展的広域化
  • 近隣水道事業者との広域化の検討を開始
  • 次の展開として広域化の取り組み推進
  • 発展的な広域化による連携推進

出典:「新水道ビジョン」(平成25年3月厚生労働省健康局)

総務省

総務省も公営企業の効率化・経営健全化の取り組みとして、広域化を推進しています。

公営企業の経営に当たっての留意事項
公営企業における経営基盤の強化、経営効率化の推進、地域住民に対するサービス水準の向上等を図る観点から、地域の実情に応じ、事業の広域化や統合等の推進について取り組むこと。具体的には、企業団、一部事務組合等の設置、事務の委託などによる共同処理方式等の手法の導入について積極的に検討するほか、「地方中枢拠点都市圏」等(※現在は「連携中枢都市圏」)をはじめ、「連携協約」に基づく地方公共団体間の連携や、「定住自立圏」等の広域連携手法の活用など、近隣の事業主体との間で機能の重複・競合を避け、相互に適切な機能分担が図られる形での連携強化の推進について検討すること。

出典:平成26年度8月29日付総務省通知

2.広域化のメリット

2-1.水道の広域化のメリット

水道の広域化のメリット
ヒト(人材)
  • 事務の共同処理による組織のスリム化
  • 専門的な知識をもつ職員の確保
モノ(施設)
  • 施設規模の拡大によるスケールメリット
  • 施設の統廃合による、二重投資の回避
  • 弾力的な水運用による危機管理能力の向上
カネ(資金)
  • 経営規模の拡大による資金の弾力的な運用
  • 地域全体における費用の縮減
  • 国の交付金・交付税などの活用
※ 国の交付金・交付税
厚生労働省:生活基盤施設耐震化等交付金
水道事業運営基盤強化推進事業
広域化事業 交付率1/3
  • 事業開始後5年以内に広域化を実現
  • 全体計画は原則10年間、平成41年度までの時限事業
  • 都道府県水道ビジョンに基づく圏域における広域化
  • 市町村域を越えて3事業体以上の広域化、かつ計画区域内の給水人口が原則5万人以上
  • 資本単価が90円/㎥以上である水道事業を含む
運営基盤強化等事業 交付率1/3
  • 広域化事業の総額を上限
総務省による交付税措置:平成30年度まで
経営戦略の策定のために広域化の調査・検討を実施する場合、これらに要する経費を重点的に支援(2,500万円上限)

2-2.水道の広域化の阻害要因

地域全体で様々なメリットがあるものの、事業間の施設整備水準や財政状況の格差が大きいため、広域化による損得が発生し、事業統合までに至らないのが現状です。特に、料金水準の格差が大きいと、料金統一のために議会や住民などへの説得が大きな壁となり、統合までの事前準備に長い期間を要します。また、検討の推進役の不在や検討の場の不足などにより十分な検討が進んでいないのが現状です。そのため、都道府県については、市町村を包括する広域自治体として、広域連携の大きな推進役としての期待がかかっています。

2-3.秩父地域の広域化の事例

事業統合までには、関係市町との協定締結、基本構想などの策定、議会及び住民説明、新たな組織発足のための各種手続きが必要となります。秩父地域の広域化では事業統合までに5年程度の期間を要し、この間で総務、経理、業務、給水装置、工務、維持管理の各専門部会を設置し、事務手続きなどの調整が行われています。

H23 水道事業運営の見直しの形成協定締結
秩父地域水道広域化準備会の発足
H25 ちちぶ定住自立圏推進委員会で組織統合に向けての検討を了承
秩父広域化準備室の設置に関する覚書の締結
H26 秩父地域水道広域化準備室の発足
秩父地域水道事業広域化基本構想(ビジョン)策定審議会委嘱状交付式
H27 秩父地域水道事業広域化基本構想(ビジョン)(案)に基づく水道広域化の意見募集
各市・町主催による秩父地域水道広域化住民説明会
秩父地域水道事業の統合に関する覚書の締結
秩父広域市町村圏組合の共同処理する事務の変更及び同組合の規約変更についての議案を可決
埼玉県より許可決定
H28 秩父広域市町村圏組合条例可決
水道事業認可(厚生労働省)
秩父広域市町村圏組合水道事業開始

参考:秩父広域市町村圏組合HP

3.業務実績

事業統合は利害関係者の合意形成に多大な労力を費やしますため、統合効果を客観的な視点で説明できる資料作りが必要となります。日水コンでは、基本構想・基本計画の策定支援、審議会など運営支援や住民説明向けの資料の提供、認可申請書、交付金申請書など書類の作成等、様々な広域化の支援及びコンサルティングを行っています。

近年の水道の広域連携では、事業統合のみならず、管理の一体化、施設の共同化も含めた事例がみられます。今後は、水道技術の確保と維持のため、近隣市町村との広域的な連携により、人材、施設、資金を弾力的に運用するとともに、地震など非常時における危機管理能力を強化する必要があります。

赤字:日水コンが支援した広域化、●広域化済、○検討又は実施中

事業統合

●八戸圏域水道企業団(H26水平統合)
●岩手中部広域水道企業団(H26垂直統合)
●群馬東部広域水道事業(H28水平統合)
●秩父地域の水道広域化(H28水平統合)
●大阪広域水道企業団(H29末端3事業を統合)
○香川県における広域化(H30予定)
○千葉県君津地域の水道広域化
○千葉県九十九里地域末端給水事業の事業統合
○千葉県南房総地域末端給水事業の事業統合

管理の一体化

●水道料金システムの共同利用(H24)
⇒高知県:四万十町、須崎市、中土佐町
●奈良県公営企業会計システムの共同運用(H26)
●上下水道料金等収納業務の共同発注(H27)
⇒茨城県:かすみがうら市と阿見町
●第三者委託と事務の代替執行による包括業務委託
⇒宗像地区事務組合が北九州市に委託(H28)
○北奥羽地区水道事業協議会による新たな広域化の検討
⇒八戸圏域水道企業団、青森県南地域、岩手県北地域

施設の共同化

●荒尾市と大牟田市の浄水場の共同化(H24)

その他

○離島8村の取水、浄水処理及び送水を沖縄県企業局に移管(H33予定)

参考:水道技術研究センターHP、総務省HP

近5ヶ年の実績(平成30年10月1日現在)

受注年度 発注者 業務名称
平成26年(2014年) 埼玉県秩父市 秩父圏域水道事業広域化基本構想(ビジョン)及び基本計画策定業務委託
平成26年(2014年) 大阪広域水道企業団 水道事業及び水道用水供給事業の統合に係る検討業務委託
平成27年(2015年) 沖縄県企業局 水道広域化(水道用水供給事業)に伴う沖縄本島周辺離島8村水道施設基本設計業務委託
平成28年(2016年) 山武郡市広域水道企業団 九十九里地域末端給水事業体の事業統合に係る基礎調査業務委託