健全な水循環社会の構築を目指して
水循環マスタープランについて
水循環計画の制度上の位置付け
国の行政施策として水循環計画の策定が進められています。 平成15年10月に「健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議」(関係5省:環境省、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省)は、『健全な水循環系構築のための計画づくりに向けて』という冊子をとりまとめました。 これは、水循環の健全化に向けて地域で実践している主体に対し、どのような目標やプロセスで実際に取り組むかについて、地域が主体的・自立的に考え、具体的な施策を導き出すための基本的な方向や方策のあり方を提示したものです。 計画の趣旨として、水循環の健全化を通じて環境負荷の軽減を図ろうとしています。 また、一部の自治体では、条例で水循環計画の策定を謳っているところもあります。 これらの内容を踏まえて、以下にNSCの考える計画策定方法の概要を示します。
水循環計画の作成時に留意すること
水循環計画と他計画の整合(将来像の共有)
水循環計画は、水に係わる様々な計画と整合を図って作成する必要があります。そして、各計画は水循環計画を通じて将来像を共有することが重要です。水に関連する計画には、土地利用計画・まちづくり計画・防災計画(河川・海岸等)・環境保全計画(環境基本計画・湖沼水質保全計画等)等があります。これら計画の関連部署と調整を図りながら計画を練り上げる必要があります。なお、水循環計画は、環境部局や河川部局で計画を策定しますが、環境部局が作成する時には行政区域が計画対象区域となり、河川部局が行う場合には個別流域単位となることが多いです。両者の整合性に留意することも必要です。
計画の策定手順
水循環計画の策定手順
水循環計画の策定手順を以下に示します。
まず、基礎調査として、水循環に関連する幅広い情報収集を行います。それらを総合して対象地域の水循環機構の状態把握を行います。その結果を踏まえて、治水・利水・環境の観点から課題を整理し、水循環の健全化に向けた方向性を明確にします。そして、他計画も参照して具体的な計画目標・基本方針を定めます。これら基本方針に基づいて様々な施策を抽出し、その効果を分析して施策の絞り込みを行います。選定された施策を体系付け、計画としてとりまとめます。
計画策定後、各種施策は実施されますが、それらの効果等を踏まえて、計画内容をPDCAサイクルで見直します。
水収支図の作成
水循環計画を作成する際にポイントとなる図があります。それは、個別に水循環の構成要素に関する現状把握を行った成果として作成される水収支図です。 同図は、対象区域の水循環全体の姿を線の太さ等で定量的に描きます。過去と現在で、水循環の経路・形態の変化や水量の変化などを比較します。 同図は、問題点がどこにあるかを考えるための判断材料になる総括図です。この図を下記に例示します。 さらに、施策を実施した後の将来の水循環系についても、効果を定量的に評価するために同図を利用します。
水収支図による状態把握(診断・評価)
健全な水循環とその施策の評価
健全な水循環とは
水循環計画では、「計画目標(計画理念)」「基本方針」及び「対策」を策定します。 計画目標については、策定主体(自治体)の定める環境基本計画(法定計画)など上位計画との整合を図りながら決定する必要があります。 これらの検討を進める際に重要となる事は、対象地域の「水循環の健全性」をどのように考えるかです。 健全であるとは、「自然環境と人間活動のバランスが保たれた状態」と定義されています(中央環境審議会)。 自然環境を優先的に保全するか、自然環境は限定し都市機能の充実を図るかなど方針を定めます。 対象地域内を区域分けし、区域毎に特色を踏まえて方針を決めることも考えられます。 地域の特性に見合った、将来を見据えた目標・基本方針を定めなくてはなりません。
施策とその評価
基本方針に基づいて、具体的な対策メニューが選定されます。施策は対象地域の特性を踏まえて設定します。
これら施策の実施結果(効果)を評価する評価指標には、様々なものがあります。 河川水量であれは、正常流量の内訳として評価することができます。 水質の改善効果だけならば水質環境基準が一般的です。 さらに、地域の水循環が健全化されることによって復活する「水環境」を総合的に評価することもできます。 例えば、水環境健全性指標(環境省:業務実績参照)を使って評価するなどです。 住民参加型の評価指標ですので、普及・啓発の意義もあります。
業務実績
環境部局等が中心になって策定した水循環計画に関連する受注業務の実績は以下の通りです。
| 委 託 者 名 称 | 件 名 | 年 度 |
|---|---|---|
| 東京都 | 水循環マスタープラン策定業務 | 平成10年度 |
| 環境省 | 児島湖水循環回復計画策定調査 | 平成14〜15年度 |
| さいたま市 | さいたま市水環境基本計画策定調査 | 平成16年度 |
| 愛知県 | あいち水循環再生基本構想 | 平成17年度 |
| 名古屋市 | なごや水の環(わ)復活プラン策定業務 | 平成16〜17年度 |
| 環境省 | 濃尾平野における地下水管理手法検討調査 | 平成18年度 |
| 宮城県 | 鳴瀬川流域水循環計画策定業務 | 平成18年度 |
| 北海道河川防災センター | 総合的な水システムに関する検討業務(石狩川流域水循環) | 平成21年度 |
| 環境省 | 水環境健全性指標検討業務 | 平成16〜22年度 |
| 環境省 | 水質環境基準生活環境項目(新規項目設定等)検討業務 | 平成21・22年度 |

