下水道施設のストックマネジメント

1.下水道ストックマネジメントとは

下水道ストックマネジメントは、『長期的な視点で下水道施設全体の今後の老朽化の進展状況を考慮し、リスク評価等による優先順位付けを行った上で、施設の点検・調査、修繕・改築等を実施し、施設全体を対象とした施設管理を最適化すること』を目的としています※1。日水コンでは、下水道ストックマネジメントについて、『道路陥没や未処理下水の流出等の事故を未然に防止するため、老朽化した下水道施設を戦略的に維持管理・改築し、機能を継続的に発揮していくための手法(ツール)』と考えています。

※1 下水道事業のストックマネジメント実施に関するガイドライン-2015年版- 国土交通省

2.ストックマネジメントの実施手順

ストックマネジメントでは、リスク評価を踏まえ、明確かつ具体的な施設管理の目標及び長期的な改築事業のシナリオを設定し、点検・調査計画及び修繕・改築計画を策定し、PDCAサイクルを実践していくことが求められています。

ストックマネジメントの実施フロー

3.管路施設のストックマネジメント

3-1.維持管理上の施設分類【提案】

施設の重要性や劣化進行の可能性等を踏まえ、維持管理上の施設単位について『点的』『線的』『面的』に捉えて管理することを提案します。

3-2.リスク評価【提案】

管路のリスクは「陥没事故等に繋がる構造的不具合」と捉えて検討します。リスクが大きい施設は点検調査優先度が高いと判断され、リスクの大きさは、横軸:リスク被害の大きさ(不具合に伴う事故による影響の大きさ)と縦軸:リスクの起こりやすさ(不具合の起こりやすさ)の組合せで評価します。またリスク評価は、線的施設は横軸・縦軸の2軸評価(対角線型評価)、面的施設は縦軸の1軸評価(縦軸評価)を基本とすることを提案します。

4.処理場・ポンプ場のストックマネジメント

4-1.ストックマネジメント計画策定方針の設定【提案】

管路施設と異なり、処理場・ポンプ場では、土木・建築構造物である躯体と機械・電気設備で構成される設備機器の相互が健全な状態で機能を発揮するものですが、相互の耐用年数が大きく異なります(例 躯体 : 設備= 50年 : 15年)。処理場・ポンプ場のストックマネジメント計画を立案するための第一歩は、躯体更新をメインとするか、設備更新をメインとするかを決めることから始めます。これにより、実現性の高い計画策定に寄与し、非効率な設備更新を防ぐことが可能になります。

4-2.リスクの考え方【提案】

処理場やポンプ場が抱えるリスクは、地震や大雨など、自然災害によって突発的に生じるリスクもあれば、停電や設備故障による機能低下・停止など、計画的な維持管理により防げるリスクも存在します。自然災害時のリスク(緊急時)と通常運用時のリスク(平常時)への対応では、優先すべき施設・設備が異なるはずです。ただし、これらの優先度の順位付け(設定)は、社会情勢や地域特性等を十分勘案し、オーダーメードで設定することが肝要です。また、設定したリスクを評価する場面においては、施設の経過年数等も十分勘案し、発生確率と被害規模のバランスを考慮したリスク評価方法についても提案します。

5.ストックマネジメントからアセットマネジメントへ

下水道事業を持続的に運営していくためには、下水道施設(モノ)の計画的かつ効率的な管理のみならず、施設管理に必要な経営管理(カネ)、執行体制の確保(人)を含めたアセットマネジメントへの発展が重要です。日水コンでは、『ストックマネジメント』から『アセットマネジメント』への発展をバックアップしていきます。

6.業務実績

近5ヶ年の実績(平成30年10月1日現在)

受注年度 発注者 業務名称
平成30年(2018年) 横浜市 横浜市下水道管路ストックマネジメント計画策定業務委託
平成30年(2018年) 平塚市 平塚市公共下水道ストックマネジメント実施方針策定委託その2
平成30年(2018年) 市川市 市川市公共下水道(菅野処理区)下水道ストックマネジメント実施方針策定業務委託
平成30年(2018年) 日本下水道事業団
東日本本部
船橋市公共下水道再構築基本設計(ストックマネジメント計画)業務委託
平成30年(2018年) 国土交通省
水管理・国土保全局
ストックマネジメントと維持管理包括民間委託の連携方策検討業務(JV)

他多数