画像処理によるアオコの簡易モニタリング

1.背景・目的

湖沼等におけるアオコの測定は、通常、採水分析(クロロフィルa,細胞数分析等)により行われています。見た目アオコ指標(国立環境研究所)も提唱されていますが、測定値が観測者に依存すること、連続測定ができない等の課題があります。また、アオコは面的、時間的偏在性が大きいため、既存の分析方法では面的、時間的に一断面しか捉えることができない点も課題です。

画像処理によるアオコの簡易モニタリングは、画像処理によりアオコを判別・測定できるため、リアルタイム(連続・遠隔)での測定が可能となります。また、UAV(ドローン)等を用いた撮影により、容易に面的な分布を把握することが可能となり、測定コストの削減を図ることができます。

表1 アオコ測定手法の比較
項目 採水分析 見た目指標 画像処理
迅速性
精度
コスト ×
面的分布 ×

2.技術の概要

画像解析により簡易にアオコを測定する技術の概要は以下のとおりです。

1.測定地点、測定期間を計画する。

既存の監視カメラの活用等も想定します。

2.アオコの撮影準備をする。

湖面の反射を抑えるなど、撮影方法にも工夫が必要です。

3.アオコの連続撮影を実施する。

連続撮影以外にUAV等を用いたスポット撮影、スマートフォン等を用いた撮影も想定されます。

4.画像処理によりアオコの発生状況を定量化・可視化する。

画像処理ではアオコの彩度(色の鮮やかさを表す指標)に着目します。図1は過去に湖面画像の彩度とMicrocystis細胞数の関係を調査した結果です。両者には正の相関が確認されました。さらに、図2は撮影された写真中の彩度が0.4を上回る領域の割合ですが、日中の増減傾向が見た目のアオコ発生状況と一致していました。アオコは空間的、時間的に偏在するため、彩度を指標に被覆面積を定量化することで、見た目の傾向とも一致し、住民にも分かりやすい説明が可能となります。また、アオコ発生状況の判別には、別途AIを用いた画像解析も適用可能です。

彩度とMicrocystis細胞数の関係

図1 彩度とMicrocystis細胞数の関係

彩度0.4以上の被覆面積と見た目の比較

図2 彩度0.4以上の被覆面積と見た目の比較

3.技術の活用事例

本技術は、アオコ発生メカニズムの検討、アオコ発生予測モデルの作成等への活用が可能です。アオコは従来は観測データが少ないことから、これらの検討等を実施するために十分なデータが得られていませんでしたが、本技術を用いることで低コストでモニタリングデータの拡充が可能となります。

図3 本技術活用の一例

アオコは閉鎖性水域の富栄養化や滞留時間の長期化等により発生しますが、これらの対策として、流入負荷の低減、導水による滞留時間の縮減化、エアレーションによる湖内攪拌等があります。本技術は、これらの対策効果を定量的に評価することにも活用可能です。

図4 本技術の活用による対策効果の定量化イメージ