構造物と地盤の一体解析

1.一体解析のメリット

水道や下水道施設は、地盤内に直接あるいは杭などの基礎構造物に支持されて建設され、これまでの設計では、支持する地盤や杭と構造物を別々に解析して設計することが一般的でした。 近年、性能設計に代表されるように構造物の破壊のメカニズムにまで踏み込んで現象を解明し、それをもとに合理的な設計を行うことを要求されることが多くなっています。 このような場合に、有限要素法は大変有効であり、構造力学を始めとして、熱力学や流体力学など様々な分野で広く用いられています。

2.地盤と構造物の一体解析

有限要素法は従来型計算と異なり、複雑な偏微分方程式を解析的に解くことなく、大型の計算機により数値的に解くものであり、精緻な解析のもとに合理的設計を行います。

  • 設計対象、目的を整理分析
  • 目的に応じて、躯体構造や地盤の非線形性の扱いの最適表現を分析
  • 複雑な形状を適正な部材の大きさを用い、全体解析モデルの作成・解析実行
  • 解析結果を合理的に解説し、納得し易いビジュアルに考慮した資料づくり

3.一体解析の作業フローと留意点

FEM解析の作業フロー

有限要素法による構造解析は

  • 土工仮設による周辺地盤の変形や地下水位の変動予測
  • 地盤と構造物の地震時連成振動解析
  • 地盤に拘束されたRC構造物の水和熱によるひび割れ予測

など、様々な場面に適用できます。また、有限要素法による解析では、一旦、コンピューター上に解析モデルさえ作ってしまえば、自由に荷重の大きさや方向など条件を変えて何度もシミュレーションすることができます。 その結果、最適なものを比較的容易に選定できます。 ただし、そのためには、適切な解析プログラムの選定や、正確な解析モデル・入力データなどが必要です。

4.業務実績

取水トンネルの地震応答解析

地盤と構造物一体系の非線形地震応答解析により、大地震時の地盤の非線形性やコンクリート躯体に発生したひび割れによる剛性低下などの影響を適切に把握し、地震時挙動を把握し、安全性の向上に寄与します。

ずい道の地震応答解析例

ずい道の地震応答解析例

工事による近接構造への影響検討

土留めやトンネル掘削による周辺地盤の沈下などへの影響を地盤の非線形性を踏まえて解析し、安全性の向上に努めます。必要に応じて弾塑性や粘弾塑性モデルを用いることができます。

開削に伴う地盤の影響解析例

開削に伴う地盤の影響解析例

トンネル掘削に伴う地盤の影響解析例

トンネル掘削に伴う地盤の影響解析例

地盤や岩盤内に建設されるRC構造物の温度応力解析

コンクリートを岩盤や地盤中に打設すると水和熱の発生に伴い温度が上昇します。 その後、熱エネルギーが地盤中に拡散し温度が下がります。 この時、構造物が地盤や岩盤などに拘束されると引張応力が発生します。 この現象を精度よく予測し、ひび割れのない耐久性に富んだ構造物の建設に寄与します。

地中円筒構造物の解析例

地中円筒構造物の解析例

液状化による沈澱地への影響解析

地盤と構造物の動的解析により、地盤の液状化が構造物に及ぼす影響を解析し、構造物の残留変形や発生断面力などの把握を通じて、総合的な機能を把握し、安全性の向上に寄与します。

液状化による沈澱地への影響解析例

液状化による沈澱地への影響解析例

近5ヶ年の実績(平成30年10月1日現在)

受注年度 発注者 業務名称
平成25年(2013年) 豊中市 平成25年度公共下水道事業庄内下水処理場水処理棟耐震補強実施設計業務委託
平成26年(2014年) 札幌市 宮町浄水場耐震改修工事実施設計業務その2
平成26年(2014年) 京都市 伏見水環境保全センター耐震診断委託(その2)
平成27年(2015年) 神戸市 玉津処理場汚水ポンプ室他耐震診断業務
平成28年(2016年) 佐賀市 佐賀市公共下水道施設(ポンプ・ブロア棟、八田ポンプ場)耐震診断業務委託
平成28年(2016年) 神戸市 東灘処理場耐震診断業務(土木)
平成29年(2017年) 佐賀市 佐賀市公共下水道施設(水処理施設1~6池、機械濃縮棟)耐震診断業務委託
平成29年(2017年) 三重県南勢水道事務所 多気浄水場浄水施設耐震化検討業務委託(多気郡 多気町相可 地内)