老朽化施設・管路の更新

1.老朽化施設・管路の更新の必要性

通水開始当初には期待どおりの性能を発揮していた水道施設・管路も、長年使用するうちに老朽化、機能低下、陳腐化などの状況を呈してきます。今すぐに、事故などによる大規模な断水や供給停止に至るような問題が発生するものばかりではありませんが、膨大な水道施設・管路の機能を適正に維持するためには、財政的な観点からも計画的な施設の整備が必要となります。

1-1.中長期的な視点と再構築の視点

水道施設が本格的に更新の時代を迎える一方で、厳しい財政状況のなか、投資効率を重視した資産管理が求められます。老朽化施設・管路の更新にあたっては、水道システムの機能改善、水道サービスの向上を図る絶好の機会でもあり、単なる取り替えではなく、水道システム全般の再構築の視点が必要です。

  • 客観的な判断基準による更新の必要性
  • 更新事業の重点化・効率化
  • 水道システム再構築・機能向上の視点から更新事業計画を立案
  • 可能投資額、更新財源の確保など、アセットマネジメントを考慮し財務面からのサポート

2.水道施設・管路の更新プロセス

2-1.既存施設の診断

機能診断

要求される機能に対応する能力を持っているかどうかを視点とし、水処理機能(原水水質VS供給水質、計画浄水量)、通水機能(需要水量VS供給水量)、貯留機能(必要貯留時間VS実貯留時間)について行います。

劣化診断

必要機能を発揮する器や装置としての物理的な強度や安定性など、構造面の状態を把握するもので、ひび割れの大きさや塗覆層の劣化などが顕在化している問題点だけでなく、例えばコンクリートの中性化や金属管の腐食深から強度を想定するなど、顕在化していない問題要因の抽出も含まれます。

耐震診断

地域防災計画などで想定する地震に対する耐震性能を把握するもので、施設の重要度を考慮して、発災時に最低限確保すべき施設能力や機能、二次災害の予防の視点から耐震化すべき施設の抽出を行います。

2-2.既存管路の診断

機能診断

要求される機能に対応する能力を持っているかどうかを視点とし、水理機能(水理解析によるダウンサイジングの可否)、水質機能(滞留時間解析、濁水発生リスク)について行います。

劣化診断

管路の腐食や老朽化による漏水リスクなど老朽度の物理的な評価を行うものです。「水道施設更新指針」による一般的な知見による評価に加えて、直接診断(管体の腐食調査)や埋設環境などの維持管理情報を踏まえた信頼度を高めた診断も可能です。

耐震診断

想定地震に対する被害想定、液状化危険度の判定により路線ごとの耐震性能を把握するもので、管路の重要度を考慮し、基幹となる管路や避難所へ給水する重要管路を設定したうえで、耐震化を優先すべき管路の抽出を行います。

2-3.整備水準の設定及び整備対象施設の選定

施設更新整備にあたって、水供給にかかる信頼度の設定や投資可能額などを考慮しながら、整備水準を設定します。次いで、水道システム全体の最適化を意図しながら、対象施設と整備方法(更新、改修、統廃合)を選定します。

※例えば、人口減少下における施設規模の適正化、事故時においてどの程度の期間の減断水を許容するか、また非常時のバックアップ能力など

2-4.整備順位の決定

上位計画や、施設の整備に関する要求度の高さ、整備期間における能力低下の影響、財政などを考慮して整備の順位を決定します。整備対象施設や順位の決定内容だけではなく、決定プロセスを簡潔に示したものを含めた資料を準備し、水道利用者に対して説明責任を果たす用意をしておくことが肝要です。

2-5.更新計画フロー(例)

更新計画フロー例

3.業務実績

近5ヶ年の実績(平成30年10月1日現在)

受注年度 発注者 業務内容
平成25年(2013年) 長崎県佐世保市 水道施設整備(第1期)基本計画策定業務
平成27年(2015年) 栃木県宇都宮市 水道施設再構築基本構想策定業務委託