水道の耐震化(耐震診断・補強)

1.耐震診断、耐震補強設計の概要

効果的かつ経済的に耐震対策を実施する場合は、対象の水道施設(池状構造物、地上水槽(高架水槽)、埋設管路、水管橋、機械電気設備など)の特徴や地震環境条件などに応じて、設計者がその都度、合理的な手法を検討する必要があります。

  • できるだけ早く、効率的に耐震化率を向上させたい
  • 一度、詳細耐震診断は実施したが、NGが多くて困っている。高度な診断手法を適用してNG箇所が減る可能性はあるのか?
  • 詳細耐震診断を実施したいが、どんな手法を適用したらいいか?動的?3次元?
  • 施設数が多くて困っている!できるだけ精度の高い簡易診断手法はない?
  • ダクタイル鋳鉄管路のK型継手管路の耐震性能を詳しく評価し、できれば耐震管路としてみなしたいが、どんな評価方法があるのか?
  • 池状構造物や水管橋の基礎杭の補強がかなり困難だが、より有効な対応策はないか?
  • 液状化の有無だけでなく、それによって、施設がどうなるか詳しく把握した上で、対策を検討したいが、そんなことできるのか?

1-1.高精度かつ効率的な提案

耐震対策(補強・更新)は、その方法によっては、非常に高額な費用の発生を伴う場合もあります。さらに、施設の運用を停止できないため耐震補強が実施できない構造物や管路が多くみられたり、基礎杭や基礎地盤の液状化対策などは池状構造物直下を対象とするため非常に施工困難な場合もあります。また、比較的簡単な手法を用いた耐震診断では、過去の地震被害において報告がないような現象を示すことも多く見られ、解析結果と実際の現象に大きな乖離が生じる場合もあります。こういった課題により、円滑に耐震対策が進まないケースも見られるのが現状と考えます。

日水コンでは、実際の地震被害をできるだけ“精度良く”評価できる手法を適用することを第一に考え、無駄な投資とならない耐震対策の実現、各水道施設に要求される地震時の性能に見合った合理的な耐震対策の実現、設備などの障害物への影響も十分に考慮し確実に施工可能な耐震対策の実現が何より必要と考えています。そして、同時にできるだけ簡単な手法、できるだけ診断費用や補強設計費用が安価な手法を提案することが重要と考えています。

1-2.技術力の研鑽

日水コンでは、水道施設の耐震診断や対策などに関する技術を磨き、全国の水道事業に貢献するために、日々の業務だけでなく、下図のような社内・社外の取組を継続して実施しております。この取組により、より精度の高い耐震診断やより効果的な耐震補強対策を、比較的安価な設計費用にて提供できるシステムが構築されています。社内の研究開発だけでなく土木学会や耐震基準類の改訂作業などの様々な社外活動を通じて、実際の地震被害の分析やそれに整合する耐震計算法の検討を日々実施しています。そして、それらの成果を公表することで、多くの方からの意見をいただき、さらに検討を行っています。

耐震技術に関する取組

2.業務実績

2-1.例)過去の耐震診断の見直しにより、補強費用を大幅に削減(耐震計算法の高度化による効果)

過去の耐震診断結果 手法の見直しによる耐震診断結果
  • 耐震計算法:静的線形解析
  • 解析モデル:構造物独立モデル(地盤:バネモデル)、3次元性考慮せず
  • 耐震計算法:動的非線形解析
  • 解析モデル:地盤―構造物連成モデル(地盤:FEMモデル)、3次元性考慮
過去の耐震診断結果 手法の見直しによる耐震診断結果
高額な耐震補強費用を必要とするものの、実際に地震被害事例が多い基礎杭の補強や構造目地の補強対策は含まれておらず、耐震対策としては不十分。 構造物の耐震補強費用は大幅に削減され、さらに地震後の構造物の変位や構造目地の相対変位を詳細に評価した結果、微小な変位なため基礎対策は必要ない。

2-2.例)水道施設への液状化の影響をより具体的に表現し、耐震補強費用を大幅に削減

  • 耐震計算法:動的非線形解析
  • 解析モデル:地盤―構造物連成モデル(地盤:FEMモデル)、3次元性考慮
  • 液状化の影響:有効応力解析により液状化による地震動の変化(特に減衰)や地盤の変化を詳細に評価
現状の耐震診断結果 耐震補強後の耐震診断結果
現状の耐震診断結果 耐震補強後の耐震診断結果
急速ろ過池は、基礎杭の損傷や基礎地盤の液状化により、適切なろ過が行えない傾斜(ろ過層の不陸:±5cm)が生じる結果となった。対策として、構造物直下地盤の液状化を防止する場合、地盤改良費に数十億の工事費が必要。 液状化対策として、液状化の発生を許容するが、急速ろ過池の変位量を鋼矢板により抑制する。変位量は有効応力解析により評価できる。工事費は数億円となり、液状化発生の防止を目的とした地盤改良に比べてかなり安価。