ごみ処理施設の建設プロジェクト
“迷惑施設”の建設における難しさ
PROJECT MEMBER
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環境・資源部
技術第二課 課長(記事掲載時)
K. S.
1998年入社
廃棄物のコンサルタント

計画段階の施設イメージ(1)
今日の廃棄物処理施設には、廃棄物の排出抑制及び適正な処理、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図る「環境保全の機能」に加え、「資源回収・エネルギー有効利用の機能」や、「防災拠点としての機能」などが求められる。
廃棄物処理施設の整備は、自治体にとって重大な事業であり、一つの施設が完成すると概ね20~30年の長期にわたり運転・管理される。また、事業の大きな流れとしても、施設整備に関する各種計画・設計・建設・竣工までで概ね7年ほどの期間を要することになるため、中長期的な視点に基づき計画的に事業実施に取り組むことが重要となる。
環境・資源部のK課長は、廃棄物処理施設の建設計画に、社内で結成したプロジェクトチームの担当技術者の一員として携わった。K課長は、プロジェクトの背景について以下のように語った。
「この地域では、現有のごみ焼却施設の老朽化の進展や今後のごみの排出量の動向及び質の多様化に対応すべく、焼却施設の更新が必要な時期に来ていました。そこで、将来に向けて必要と考えるごみ焼却施設の機能や施設規模、建設位置、法規制条件、処理方式等の基本事項を検討・整理し、施設整備構想としてとりまとめを行いました」。
住民要望を建設計画に落とし込む
廃棄物処理施設の整備にあたっては、施設の必要性は誰もが認めるところではあるが、居住地の近隣に造られることに対して多くの人が反対する「迷惑施設」として位置づけられることが多い。このプロジェクトにおいても、ごみ焼却施設の周辺地域では、小学校の立地や急速な都市的土地利用が進んだことから、近隣住民からの要望を踏まえ、ごみ焼却施設の移転建設を前提とした事業としてスタートすることになった。

走り出したプロジェクトについて、K課長は次のように説明する。
「新たなごみ焼却施設の建設候補地の選定にあたり、まず学識経験者、自治連合会の代表、公募で集った市民が参画した『策定委員会』が設置されました。そこで協議・検討を重ねて選定された建設候補地において、今後発生する焼却ごみを適正処理するために必要とする施設整備の基本事項についての合意形成を得るため、公正な視点で資料を準備するとともに、会議の運営及び技術的支援を行いました」。
また、施設を新設するにあたり「地域還元施設」の建設が条件に加わった。ごみ処理施設と一体的に地域還元施設を整備することは、循環型社会の構築に向けたごみの減量化・リサイクル等を推進することに寄与し、周辺環境の向上やイメージアップ、地域振興策等につながる。
「このプロジェクトでは、近隣住民の皆様にご理解ご協力いただくため、地域還元施設として余熱を利用した地域コミュニティセンター等の建設について検討しました」。
強く感じたコンサルタントの存在意義
プロジェクトの推進にあたって印象的だったことについて、K課長はこう語る。
「行政側と、現有ごみ焼却施設の近隣住民と、新たな建設候補地の近隣住民。この三者それぞれの意向をすり合わせることが難しく、そして非常に重要であることを再認識しました」。
現有ごみ焼却施設の近隣住民としては、他の地域で早く新しい施設を建設し、現有施設を廃止して跡地を有効利用して欲しいという意向が強くなる。一方で新たな建設候補地の近隣住民からは、地域環境への悪影響(大気汚染、騒音、振動、悪臭等)を懸念し、地域還元施設を要望する声があるなど、それぞれの立場によって行政側に求めるものが違ってくる。

計画段階の施設イメージ(2)
公共施設の整備においては、充当できる予算が限られている中で様々な要望を満たし、かつ施設が環境保全や資源・エネルギー利用等の機能を備えるような事業計画を立案することが必要である。
「専門家として環境性や経済性に配慮するだけでなく、それぞれの立場からの意見を踏まえつつバランスのとれた事業計画が検討できるように、公正かつ客観的な情報を提供することに力を注ぎました」。プロジェクトを通して、K課長はコンサルタントの存在意義を強く感じたと言う。
水と環境のコンサルタントとして見据える未来
日水コンの環境・資源部では、これまで取り組んできたごみやし尿等の処理に関する計画・設計・建設のコンサルティングに加え、生ごみや下水汚泥などのバイオマス資源を有効活用する方向性を示すとともに、ごみ焼却施設と他の公共施設(下水処理施設、し尿処理施設等)との連携による効率的な運用計画や、施設整備計画の立案などを進めている。

「日水コンは『上下水道のコンサルティング会社』というイメージが強いと思いますが、それ以外にも廃棄物分野をはじめとする幅広い分野に取り組んでいます。上下水道分野はもちろんのこと、廃棄物分野にも興味がある皆さんと一緒に今後の業務展開を図っていきたいと思いますので、是非エントリーしてください。お待ちしています!」
地域住民にとって真に必要なインフラとは何か。日水コンでは、環境や資源・エネルギーという観点からも、その命題を追求しつつ技術者たちが研鑽を重ねている。