土砂・洪水氾濫対策の検討

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1. 土砂・洪水氾濫対策の検討内容

図1 土砂・洪水氾濫対策の検討・立案手順
図1 土砂・洪水氾濫対策の検討・立案手順
出典:砂防学会「第70回R3年度砂防学会研究発表会概要集」

当社は、国土交通省の発注業務を主体に2016年度より土砂・洪水氾濫対策計画の検討に取り組んできました。これまでの経験・実績を通じて蓄積した高度な砂防全般の技術、数値計算技術を生かし、「土砂・洪水氾濫により大きな被害のおそれのある流域の調査要領案(試行版)(以下、試行版という)」に則り流域を抽出し、精度の高い「土砂・洪水氾濫対策計画」を検討・立案いたします。

1-1.流域の抽出

  • 試行版に則り、発生ポテンシャル調査(勾配1/200地点より上流、流域面積3km2以上、土砂量10万m3以上)及び被害ポテンシャル調査(公共施設ないし家屋50戸以上)を実施し流域を抽出。

1-2.被害想定、施設配置検討

  • 計算モデルを構築するとともに、土砂量調査や粒度調査を実施し、過去の豪雨災害を対象にした再現計算により計算モデル・条件・手法の推定精度を検証。
  • 同手法・モデルを活用し、計画規模降雨時の土砂・洪水氾濫被害を想定。
  • 被害を軽減・防止できる施設配置計画を検討し、感度分析により効果を確認(必要によりB/Cを検討)。
図2 流域の特徴に関する調査の概念図
図2 流域の特徴に関する調査の概念図
出典:国土交通省「土砂・洪水氾濫により大きな被害のおそれのある流域の調査要領(案)(試行版)」

2. 提案の技術的ポイント

ポイント① 国土技術政策総合研究所資料及び関連研究成果に則った実績のある計算モデルの構築

図3 土砂移動形態に応じた細粒土砂の流下イメージ
図3 土砂移動形態に応じた細粒土砂の流下イメージ
出典:国土交通省国土技術政策総合研究所
「国総研資料第874号」を加工して作成

  • 「異なる土砂移動形態の連続計算」、「支川の合流部等の安定した計算」、「細粒土砂の被害影響を反映した計算」など、国総研資料(第874号、第1048号)に準拠した複数流域で適用実績のある信頼性の高い計算モデルを活用(業務実績参照)。
  • 計算モデルには、流域特性等に応じて、最新の研究成果による知見を取り込み、計算精度の向上を図る(例えば、火山地特有の土砂動態に応じたモデル改良)。

ポイント② 土砂動態との整合性を確保した再現計算

  • 降雨量や土砂移動に関する各種モニタリングデータの有無から再現対象となる災害を選定し、過去の土砂動態を把握・整理。
    • 当社の判読技術のノウハウを活用し、災害前後の空中写真やオルソ画像、LPデータを元に、土砂移動実績図を作成(図5)。
    • 土砂移動の生じた範囲(崩壊、堆積域など)を対象に災害前・後のLP差分により、崩壊土砂量、河床変動量を集計し、土砂収支により生産土砂量、流出土砂量を整理。
  • 整理した土砂動態に基づき、計算条件を設定し再現計算。実績と計算結果の整合性(水流出状況、土砂生産状況、河床変動状況)を検証しながら、計算条件やパラメータ等を変更したトライアル計算を実施することにより、再現性を確保した計算モデル・条件・方法を検証・決定。

図4 土砂移動実績図の作成事例

図4 土砂移動実績図の作成事例

図5 河床変動状況の整合性確認事例

図5 河床変動状況の整合性確認事例

ポイント③ 一次元河床変動計算、及び二次元氾濫計算による被害想定

  • 「治水経済調査マニュアル(案)」、「砂防事業の費用便益分析マニュアル(案)」に準拠し被害想定。
  • 再現計算の計算モデル・条件に、計画規模の外力を適用し一次元河床変動計算より、氾濫開始点を設定。
  • 氾濫開始点ごとに、二次元土砂・洪水氾濫計算を実施し、被害想定。

ポイント④ 実現性及び効果を確保した施設配置検討

図6 土砂・洪水氾濫対策のイメージ
図6 土砂・洪水氾濫対策のイメージ
出典:国土交通省「実効性のある避難を確保するための土砂災害対策検討委員会」配布資料

  • 被害想定の計算結果に基づき、被害の発生する土砂堆積箇所、被害の原因となる多量な土砂の流出源(流域)を分析し、土砂流出・堆積を軽減する施設配置計画を検討。
    <配置の基本>

    • 主たる保全対象に近い下流の基幹施設を対象。
    • 流域内の土石流対策を含めることで、地域(流域内外)における被害の軽減効果を効率的に確保。
    • 制約条件(土地利用等)を現地確認し、実現性を確保。
  • 被害想定の計算条件に基づき、施設配置計画の効果を検証(十分な効果が発揮されない場合には随時見直し)。
  • 計画規模を超過する降雨条件等を用いた感度分析により、超過外力に対する施設効果の不確実性を確認。

3. 業務実績

受注年度 発注者 業務名称
2021 静岡県 島田土木事務所 島田土木事務所管内における流域土砂・洪水氾濫対策検討業務
2020 兵庫県 丹波土木事務所 美和川外 土砂・洪水氾濫対策検討業務
2020 兵庫県淡路県民局 洲本土木事務所 室津川土砂・洪水氾濫対策検討業務