樋門ゲートの無動力化

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近年、ゲリラ豪雨や津波のリスクが増大し、施設管理者の人材不足も進む中、樋門ゲートの省力化や高速化が求められるようになっています。日水コンでは、樋門ゲートの無動力化により、人手を必要とせず、より迅速に反応するゲートシステムの構築をご提案します。この取組みによって、施設管理者の負担軽減と、災害時のより高速な対応が可能となります。

1. 樋門ゲートの種類と課題

樋門ゲートには、上部に設置した開閉機により扉体を上下にスライドさせて止水する最も一般的な引き上げ式ゲート(スライドゲート、ローラーゲート)、ゲート前後の水位差により動作し開閉装置を必要としないフラップゲート、左右2枚の扉体を側部ヒンジを中心として回転させて、水路を開放・閉鎖させるマイターゲート等があります。これらのゲートは「河川管理施設等構造令」で「確実に開閉し、かつ、必要な水密性を有する」と定められています。

従来のフラップゲートには異物のかみ込みによる不完全閉塞の懸念がありましたが、新型の平水時開放型フラップゲートが開発されており、この問題も解消されています。

図1 従来のフラップゲートと平水時開放型フラップゲートの比較
図1 従来のフラップゲートと平水時開放型フラップゲートの比較

2. 無動力化の判断指標を作成

種々の利点がある樋門ゲートの無動力化ですが、水密性の面では従来の引き上げ式に比べ確実性の面で劣ると考えられます。

そこで、対象となる樋門の背後地の土地利用状況、堤内側宅地地盤高と本川HWLとの比高差、扉体面積(函体内空断面)、対象河川の特性(流木、塵芥量等)を整理し、不完全閉塞時のリスクが少ない樋門ゲートの無動力化を提案します。

具体的には、事例や施工実績等をもとに当該河川に適した無動力化判断指標を作成し、実施の是非を判定します(図2)。

図2 無動力化判断指標作成例
図2 無動力化判断指標作成例

3. 既設樋門ゲートの無動力化設計

平水時開放型フラップゲートには、その動作機構の違いによってバランスウエイト式や浮体(フロート)式があるほか、ヒンジ位置も上・下2通りあります。また、既設樋門の土木施設(翼壁や堤外水路等)の改造も必要になりますので、ゲートの形式と土木施設改造規模の両面を考慮した最適なゲートの無動力化設計を行います。

図3 樋門無動力化施工例(当社設計)
図3 樋門無動力化施工例(当社設計)

3-1.もしもの時の安全装置

平水時開放型のフラップゲートは、塵芥等のかみ込みを回避する工夫がされていますが、完全に回避できる保証はありません。このため、不完全閉塞時に扉体を若干開閉させ、障害物を排除して完全閉塞させるための非常用動力を設置できるタイプもあります。また、洪水時には扉体が水没しているため、完全閉塞を目視で確認することはできません。このような場合を想定し、閉塞状態を回転灯によって周知できるシステムを付加することも可能です。

3-2.フラップゲートの操作・確認要領の作成

フラップゲートでは、ゲートの全閉・全開操作は不要ですが、完全閉塞の確認や不完全閉塞時の対応が必要です。そのため、「樋門等の操作規則・操作要領作成における操作員退避検討に当たってのガイドライン」に基づいた操作・ゲート確認要領の作成をご提案します。新設のフラップゲートにおいても、このような要領を作成することは、管理を委託する際にも望ましいと考えます。

4. 業務実績

受注年度 発注者 業務名称
2019 滋賀県近江八幡市 第6号 石亀樋門無動力化詳細設計業務委託
2013 兵庫県但馬県民局養父土木事務所 (一)円山川水系円山川樋門詳細設計業務委託
2012 関東地方整備局甲府河川国道事務所 H24切石地区排水樋管概略設計業務
2010 四国地方整備局高知河川国道事務所 平成22年度仁淀川樋門無動力化設計外業務委託